c1132 おいしい画どす

ところがこの男、とんでもない事をしでかすのであった。 野球中継の技術総責任者は、中継車の中でカメラやVTR、音声や照明等に指示を出し、画像を瞬時に切り替えるテクニカルディレクター(TD)である。 このTDは12台のカメラ、6台のスローなど18画面、音響や照明など、インターカムで繋がっており、適宜に指示、かなり経験を積んだ15年、20年選手が通常は座る。 まさかの出来事だが、このB君、五年を待たずしてTDの席へ座っていたのである。 当然大ベテランは自分がTD席へ座る番。10年早い! と怒鳴りつけ、足を引っ張りそうなものだが、どういう訳かB君にはトチらせたくない、という雰囲気を持ってホローしたくなる性格だ。 大先輩、三カメさん、頂きました、あんがとさん・・ およよ、五カメさん監督キープ・・おいしい画どす、OK。なんて、京弁丸だし。 怒号飛び交う車内の雰囲気が、がらりと変わっていたのだ。 TD経験大御所から・B君は君が採用したひかる組だろう、どこを見込んで採用した、と聞かれたが、こちらが質問したいところです、と答えた。 勿論、甲子園経験A君も同期に負けじと、現在でも切磋琢磨中である。 今宵も後輩たちの成長ぶりをテレビで楽しみ、晩酌するひかるである。 ひかる中学卒業時、小児麻痺の妹は7才、どん底生活だった。その日の食べ物すら確保できない状況。 忘れようにも忘れられない食べ物それはカタツムリだ。 食べ物も底をつき何もない。雨が降ると石垣の合間から小さなカタツムリが這い出る。それを沸かして食べるのである。 勿論醤油や味噌もない。ぬるぬるし、殻ごとジャリジャリたべるのである。 母は痩せこけ栄養失調状態だが、必死にひかるの命を繋いだのである。 フランス料理、カタツムリが高級料理らしいが、ひかるにとってはゾッとする食べ物、生涯口にする事はない。

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