c1027 真夏のオーバーコート


ひかるが小学校へ入る前の出来事で、瞬間最大風速70メートルくらいはあったでしょうか。
大型の台風が、島を直撃。平たんな島は、風圧をまともに受け、遮る物は何も有りません。
電気は無く、真っ暗闇の真夜中、轟音渦巻く風の音、激しく叩き付ける雨の音、そして、家がギシギシとマッチ箱を揺するが如く、激しく揺れ動いているのに目が覚めました。
暗闇に目を凝らすと、父と母が、いつもと違う、重苦しい不安げな顔で天井を見つめ、会話を交わしております。
父は、「台風は我が家を直撃する。この分だと屋根が吹き飛び、危険なので避難をする」と、ため息を残し、立ちあがりました。
母は、「この嵐の中、どうやって避難所まで、行き着くのか」と、脅え声。
(台風は目に向かって、左回りに風が吹き、一点にいて、刻々変わる、風向きと風力で、台風の目がこちらへ向かって来るのか、逸れて行くのか判断出来ます)
具体的に北東の風が東になり、時間経過で強まり北東の風に戻ってきた場合、間違いなくこちらをめがけ直撃体勢に入っている事になります。
父が、オーバーコートを出すよう、指示。
風があるとは言え、南国の汗ばむ真夏。
なぜ、オーバーコートが必要なのか?
雨具代わりに使うのだろうか?
答えはすぐ、出ました。
母が大事にしまってある、一着しか無いオーバーコートを出すと、無造作の中にも、襟元をきつく絞り、ベルトをしっかり締め、子供達は、両方の裾に掴まれ、との事である。
初めて見る、父のオーバーコート姿でした。

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